社会保険料の算出は、従業員の給与を基に行われますが、毎月変動する給与額そのままではなく、一定期間の給与額を平均して算出した「標準報酬月額」を用います。
この標準報酬月額を算出するための基礎となるのが「算定基礎」です。
算定基礎は、社会保険料の正確な算出に不可欠な要素であり、人事担当者にとって正確な理解が求められます。
今回は、算定基礎の定義、標準報酬月額との関係性、算定基礎届との関連性について解説します。
算定基礎とは何かを理解する
🔸社会保険料算出の基礎となるもの
社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料)は、従業員の報酬に基づいて算出されます。
しかし、毎月の報酬額が変動するたびに保険料額も変動するわけではありません。
そこで、一定期間の報酬を平均化し、等級別に区分した「標準報酬月額」を用いて保険料が算出されます。
この標準報酬月額を算出するための基礎となるのが、算定基礎です。
算定基礎は、4月、5月、6月の報酬を基に計算されます。
🔸標準報酬月額との関係
算定基礎は、標準報酬月額を算出するための重要な要素です。
標準報酬月額は、算定基礎に基づいて計算され、その年の9月から翌年の8月までの1年間、社会保険料の算出に用いられます。
算定基礎を正確に計算することで、標準報酬月額、ひいては社会保険料を正確に算出することができます。
標準報酬月額の等級は、健康保険と厚生年金保険でそれぞれ異なり、全国健康保険協会の健康保険料率については都道府県ごとに設定されています。
🔸算定基礎届との関連性
算定基礎届は、算定基礎に基づいて算出された標準報酬月額を年金事務所に届け出るための書類です。
毎年7月1日から10日までに提出が義務付けられており、提出期限を守ることが重要です。
算定基礎届の提出により、その年の9月から翌年の8月までの社会保険料が決定されます。
算定基礎届の記入には、4月、5月、6月の報酬額、支払基礎日数などの正確な情報が必要です。
算定基礎の対象となる報酬と対象外となる報酬
算定基礎の計算においては、対象となる報酬と対象外となる報酬を明確に区別する必要があります。
対象となる報酬には、基本給、各種手当、年4回以上の賞与などが含まれます。
一方、対象外となる報酬には、一時的な見舞金、退職金、慶弔金などが含まれます。
現物支給についても、通勤定期券や食事などは対象となりますが、制服や作業着などは対象外となります。
🔸対象となる報酬の例示
対象となる報酬には、基本給、各種手当(通勤手当、家族手当、住宅手当など)、役職手当、職能手当、時間外勤務手当、休日勤務手当、深夜勤務手当、賞与(年4回以上支給されるもの)、通勤定期券、食事、社宅などが含まれます。
これらの報酬は、金銭または現物で支給される場合があり、現物支給の場合は、その価額を換算して計算します。
🔸対象外となる報酬の例示
対象外となる報酬には、一時的な見舞金、退職手当、解雇予告手当、慶弔金、出張旅費、交際費、傷病手当金、労災保険の休業補償給付、年3回以下の賞与、制服、作業着などの勤務に要する被服などが含まれます。
これらの報酬は、算定基礎の計算には含めません。
🔸報酬の算定における注意点
報酬の算定においては、支払基礎日数を正確に把握することが重要です。
支払基礎日数とは、報酬の支払い対象となる日数のことです。
月給制の場合、暦日数が支払基礎日数となりますが、日給制や時給制の場合は、出勤日数が支払基礎日数となります。
また、欠勤控除がある場合は、就業規則などに基づいて支払基礎日数を算出する必要があります。
さらに、短時間労働者の場合は、支払基礎日数の基準が異なる場合があるので注意が必要です。
算定基礎を用いた標準報酬月額の算出方法と手続き
標準報酬月額は、算定基礎に基づいて計算されます。
算定基礎は、4月、5月、6月の報酬を平均化して算出されますが、すべての月の支払基礎日数が17日以上であることが条件となります。
17日未満の月がある場合は、17日以上の月の報酬のみを用いて平均を計算します。
算出された平均報酬額を、保険料額表に照らし合わせることで、標準報酬月額が決定されます。
🔸算出に必要な情報と手順
標準報酬月額を算出するには、4月、5月、6月の各月の報酬額、支払基礎日数、現物支給額などの情報が必要です。
まず、各月の支払基礎日数を確定し、対象となる報酬の合計額を算出します。
次に、支払基礎日数が17日以上の月のみを対象に、報酬額の平均を計算します。
最後に、算出された平均報酬額を保険料額表に照らし合わせ、標準報酬月額を決定します。
🔸計算例
例として、4月、5月、6月の報酬額がそれぞれ25万円、26万円、27万円で、支払基礎日数がすべて30日である場合を考えます。
この場合、3ヶ月の報酬合計は78万円となり、平均報酬額は26万円となります。
この平均報酬額を保険料額表に照らし合わせ、標準報酬月額を決定します。
🔸よくある間違いと注意点
標準報酬月額の算出においては、支払基礎日数の計算間違いや、対象となる報酬と対象外となる報酬の区別が曖昧になるケースがしばしば見られます。
また、短時間労働者の場合、支払基礎日数の基準が異なるため、注意が必要です。
算定基礎届の提出期限も重要であり、期限内に正確な情報を記載して提出することが求められます。
まとめ
算定基礎は、標準報酬月額を算出するための基礎となる重要な要素です。
人事担当者は、算定基礎の定義、対象となる報酬と対象外となる報酬、標準報酬月額との関係性、算定基礎届との関連性、算出方法などを正確に理解する必要があります。
算定基礎を正確に把握することで、社会保険料を正確に算出し、従業員への適切な保険料負担を実現できます。
算定基礎届の提出期限を守り、正確な情報に基づいて手続きを行うことが重要です。
算定基礎の理解は、人事担当者の業務効率化と正確性の向上に大きく貢献します。